発信という、もう一つの「現場」

2024年1月、能登半島地震。石川県に拠点を置く私たち江口組にとっても、かつてない激動の始まりでした。

余震が続く中、現場へ向かう社員たちの背中は、これまでになく力強く、そしてどこか悲壮感すら漂っていました。

「道が通じなければ、助けられない。」

その一心で、彼らは土砂崩れや地割れで寸断された道路の啓開作業に励んでいました。

鳴り止まない重機のエンジン音、舞い上がる砂埃、そして冷たい雨。極限状態の中での作業は、まさに時間との戦いでした。

その様子を、江口組はSNSで発信を始めました。

正直、迷いもありました。

「こんな時に、発信するなんて、不謹慎ではないか?」
「自慢をしているように思われないか?」

そんな葛藤が、何度も頭をよぎりました。

しかし、自分たちが目にしたのは、ただの「工事」ではありませんでした。

崩れ落ちた家屋を目の前に、涙を流しながらも、一歩ずつ前に進む人々の姿。

そして、それを支えるために、汗と泥にまみれながら働く仲間たちの姿でした。

土木は、ただの「インフラ整備」ではありません。人の命を守り、まちの営みを取り戻す、かけがえのない仕事です。

「この仕事の尊さを、こんなときだからこそ伝えたい。」

その想いが、私の迷いを吹き飛ばしました。

冷たい画面の向こうから、届いた温もり

発信を始めると、驚くほど多くの反響がありました。

「ありがとうございます!」
「皆さんの活動が、希望です。」
「体に気をつけてください。」

冷たいスマートフォンの画面の向こうから、温かい、そして力強いメッセージが、次々と届き始めました。

中には、被災された方々からのメッセージもありました。

「道が通じたおかげで、親戚の安否を確認できました。」
「江口組さんの重機が見えたとき、涙が出ました。」

その言葉に、私は何度も目頭が熱くなりました。

私たちの発信は、単なる「活動報告」ではありませんでした。それは、被災地と、それを支える人々をつなぐ、「絆の糸」だったのです。

また、メッセージは自分たち自身にも、大きな変化をもたらしました。

「私たちの仕事は、誰かの役に立っているんだ。」
「この仕事に、誇りを持っていいんだ。」

現場で働く社員たちも、SNSに寄せられたメッセージを見て、改めて自分たちの仕事の価値を実感していました。

それは、彼らの疲れを癒やし、明日への活力を与える、何よりの薬でした。

土木は、物理的なインフラだけでなく、心のインフラも作っているのだと、私はこの時、改めて気づかされました。

土木の力、そして未来への誓い

3月16日の表彰式。会場は、土木広報の最前線で活躍する人々で熱気に包まれていました。

受賞の挨拶で、僕は、能登半島地震での経験、そしてSNSに寄せられたメッセージについて語りました。

「この受賞は、現場で頑張った仲間たち、県内建設会社の皆さま、そして温かい声を寄せてくださった皆さまのおかげです。」

そう言うと、会場から、温かい拍手が沸き起こりました。

その拍手を聞きながら、私は思いました。

「土木広報は、単なるPRではない。土木という仕事の『体験・感情・物語・関係性』を伝えること。そして、土木と社会、人と人をつなぐことなのだ。」

今回の受賞は、私たちがこれまで取り組んできた「伝える土木」の活動が、認められたのだと感じています。

しかし、これはまだ、通過点にすぎません。

これからも、土木の力と価値を、しっかり伝え続けていきます。

それは、土木に関心のあるすべての人に、そして、これから社会へ羽ばたく就活生の皆さんに、この仕事の魅力を知ってもらうためでもあります。

土木は、決して地味な仕事ではありません。それは、人の命と未来を守る、最高にカッコイイ仕事です。

土木の力で、地域を、そして日本を、もっと元気にしていきます。

江口組は、これからも、皆さまと共に、歩み続けます。

ありがとうございました。

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