叱られたあの日から
「叱る」というのは、実はとても難しいことです。
相手の成長を思って言葉を選んでも、受け取る側には厳しく響くこともある。
叱る方も、決して気持ちのいいものではありません。
でも、叱ることには「想い」があります。
それは「できないことを責める」ためではなく、「できるようになってほしい」という願いです。
そんな想いで新人くんに声をかけたのが、数ヶ月前のこと。
仕事の進め方、段取り、報連相・・・どれもまだ慣れておらず、注意する場面も多かった。
しかし、あの日を境に、彼の中で何かが変わりました。
何も言わずとも動けるようになった姿
最近のこと。
現場で、私はふと新人くんの姿に目を奪われました。
誰に言われたわけでもなく、自分から進んで掃除を始めていたのです。
以前なら「やっておいて」と声をかけなければ動けなかった彼が、今は当たり前のように行動している。
その姿を見た瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなりました。
きっと、最初の頃は「叱られないように」と動いていたかもしれません。
でも今は違う。
自分の中に“責任”や“気づき”が生まれたからこそ、誰に言われなくても動けるようになったのだと思います。
成長というのは、ある日突然やってくるものではありません。
何度も失敗し、注意され、落ち込んで、それでも諦めずに挑戦を続けた先に生まれるもの。
その積み重ねが、確かな力になります。
そして何より、その姿が周りの人の心を動かす力になるのです。
人が育ち、人が人を支える現場
新人くんの成長を見て感じたのは、「人は人によって育つ」ということでした。
あの日、叱られた言葉がきっかけとなり、自分で考え、行動するようになった彼。
その変化を見た先輩たちは、自然と声をかけ、フォローし、見守るようになりました。
一人の成長が、周囲に良い影響を与える。これがチームというものの力です。
現場は、技術や経験だけで成り立っているわけではありません。
そこには「人」がいて、「関わり」があって、「想い」があります。
誰かの頑張りが誰かの力になり、誰かの成長が誰かの原動力になる。
そうしてチーム全体が少しずつ前に進んでいく。
この循環こそ、江口組が大切にしている“和の力”です。
「叱る」と「育つ」
一見、対極にあるように思えるこの二つの行為は、実は一本の線でつながっています。
その線の先には、お互いを思い合い、共に成長する関係があるのだと思います。
叱られたあの日から、何も言わずとも動けるようになった新人くん。
その姿を見たとき、私は安心したと同時に、心から嬉しくなりました。
人が成長する瞬間というのは、見ている側にも大きな力を与えてくれます。
「頑張ってよかった」「伝えてよかった」
そんな気持ちにさせてくれるのです。
現場は、今日もいろんなドラマであふれています。
悔しさもあれば、嬉しさもある。
けれどそのすべてが、次の成長につながっていく。
今日もまた、一人の成長に「ありがとう」を伝えたいと思います。