ランニングコースにある“あの場所”は、歴史の舞台
僕がよく走っているランニングコース、梯川を安宅の海に向かって走ると、「安宅の関」があります。
風が心地よく、海の香りが漂い、心と体を整えるにはぴったりの場所。
何も考えずにただ走る、というのももちろん気持ちいいですが、実はここ、歴史的にもとても有名な場所なのです。
源義経と弁慶の物語で知られる、歌舞伎の名作『勧進帳』の舞台。
走りながら、ふと視線を横に向けると、関所跡や弁慶、富樫、義経の銅像が目に入ります。
「今、自分は物語の舞台の上を走っているんだ」と思うと、どこか背筋が伸びるような、不思議な感覚になります。
歌舞伎『勧進帳』と小松のまちの誇り
『勧進帳』といえば、歌舞伎ファンなら誰もが知る名作。
武蔵坊弁慶が主君・義経を守るため、嘘の勧進帳を読み上げるという緊迫感ある場面が有名です。
この物語の舞台となった「安宅の関」は、石川県小松市にあります。
そしてこの小松市は、「歌舞伎のまち」としても知られているのです。
町中に勧進帳をモチーフにしたオブジェや看板があり、観光スポットとして整備された安宅の関跡には、弁慶と義経の像や資料館もあります。
でも、何より素晴らしいのは、この伝統文化が“今も生きている”ということ。
毎年、市内では「子供歌舞伎」が行われたり、中学生による『勧進帳』の演劇が披露されたりと、若い世代が“体験を通じて”伝統に触れられる機会がたくさんあるのです。
単なる観光資源としてではなく、地域の誇りとして、文化を継承する取り組みがここにはあります。
未来へつながる文化の継承。地域と走るということ
僕がランニングをしているときに安宅の関を通るたびに思うのは、「自分はただの“観光地”を走っているんじゃない」ということ。
ここは、過去から今へ、そして未来へとつながっていく、“物語の舞台”であり、“文化の継承地”でもある。
しかも、それを支えているのは、地域の人たちの努力と誇りです。
文化を残すには、時間も手間もかかる。
でも、それを惜しまず、「子どもたちに伝えていこう」と行動している人たちがいる。
そう思うと、単なるジョギングにも、ちょっとした意味が生まれてくるんです。
文化って、立派な施設や大きなイベントだけじゃない。
日常の中に生きているものだと思います。
そして、それに気づける場所が、小松にはある。
走りながら、文化に触れ、地域の魅力を再認識する。
そんな時間が持てることに、僕自身、感謝しています。