耐えがたい夏の暑さと、予期せぬ解決策
今年の夏を振り返ると、本当に「異常」という言葉が当たり前になった暑さでした。
40度近い日が連続し、私の住む小松市も観測史上初の40℃超えを記録しました。
「年々暑さが半端なくなってきている」と嘆く声は、もはや毎年の恒例行事のように聞こえてきます。
そんな中でも、皆さんの暮らしを支える工事現場では、作業員の皆さんが汗を流しながらインフラを守り、未来の街をつくっています。
しかし、その姿の裏には、常に「熱中症」という大きなリスクがあるのです。
日除けや空調服、こまめな休憩時間の確保といった工夫を重ねても、限界を超えた酷暑の前では効果が追いつかないのではないかと心配することがあります。
年々暑くなる夏において、もはや「現場の努力」で乗り越えられない時がくるのではないかと思います。
そうなると働き方のシステムそのものを根本から問い直さなければならない時代がきたのではないのでしょうか。
国が打ち出した「夏季休工」という挑戦
そんな背景のなか、驚きのニュースを見ました。
国土交通省が大胆な新方針を示したのです。
真夏の土木工事に1~2か月程度の「夏季休工」導入へ…国交省が猛暑対策で試行、早朝・夜間工事も推進
真夏の一定期間、現場作業を休みにする、いわゆる「夏季休工」です。
対象は道路舗装や盛り土、埋め立てなど炎天下での作業を伴う工事で、1〜2か月程度をめどに導入されます。
もちろん、地震や台風などで道路が壊れた場合など、緊急性の高い工事は対象外です。
また、日雇い労働者の仕事が減ってしまう懸念もあることから、まずは試験的に導入し、影響を検証する方針です。
この政策が「単なるアイデア」ではないのは、すでに成功例があるからです。
関東地方整備局の宇都宮国道事務所では、昨年から8件の工事で試験的に「夏季休工」を導入しました。
その結果、工事を請け負った業者からは「社員の健康管理や働き方改革に直結する」と高い評価を得ました。
休工中は作業員の休暇に充てたり、資材準備や工程の調整に活用できたのです。この実績が、今回の全国展開の大きな後押しとなりました。
安全から未来戦略へ
国交省が見据えるのは、熱中症対策だけではありません。
炎天下での過酷な作業は、深刻な「担い手不足」の要因にもなっています。
だからこそ、「夏季休工」は、労働環境を根本から改善し、若者が安心して働ける業界にするための戦略的な一手でもあるのです。
実際にある幹部はこう語っています。
「猛暑の中で働くのは危険で生産性も落ちる。多様な働き方を選択できるようにし、安全性を高めることで担い手確保につなげたい」
建設会社を経営する私も共感するところがあります。
「社員や協力会社の健康を守るため、作業時間の短縮や猛暑日の調整は欠かせない」と思います。
酷暑は事業継続の危機感と直結しています。
さらに気候だけでなく、人々の価値観や労働観が変わるなかで、建設業界も旧来の慣習を捨て、新しい働き方を模索うる必要があると感じます。
記録的な猛暑は、建設業界に「働き方の見直し」を突きつけています。
建設業界に導入される「夏季休工」は、その象徴ともいえる出来事です。
これまで「休むこと」が難しかった日本の労働文化に、気候変動という避けられない環境が、休むこと、安全に働くことを問題提起しているようにも思います。
建設業で「夏休み」が当たり前になる。こんなこと数年前には考えられませんでした。
でも、数年前には考えられない酷暑が現実にあります。
この課題、また夏季休工という解決策に対して、さまざまな意見があると思います。
ただ、今までのままという状況ではいけなくなってきました。しっかりと議論し、みんなが働きやすい環境づくりを創っていかなくてはいけません。
建設業において新しい働き方ができた時、私たちの社会全体や他産業の働き方にも大きな波及効果が生まれるでしょう。
「休むことは守ること」。
その新しい常識が根づいたとき、次の時代の働き方が見えてくるはずです。