広報活動が不要だった土木の世界の常識を打ち破る
今日のブログは、江口組の土木広報の道のりを振り返りたいと思います。
この道のりは、土木業界の常識を打ち破る「非常識」な挑戦でした。
2000年代後半まで、公共土木の世界は、広報活動がほとんど不要でした。
入札制度によって工事を受注できたため、一般の方々に自社の取り組みを知ってもらう努力は必要なかったのです。
つまり広報活動が不必要な業界だったと思います。
江口組も、広報活動はお付き合い程度の新聞広告にとどまっていました。
しかし、今からおよそ15年ほど前、江口組は大きな危機感に直面しました。
それは、採用活動の企業説明会での出来事です。
説明会に参加してくれた学生たちから「土木って未来あるのですか?」「親が土木だけは行なって言っている」という質問を受け、私は心底愕然としました。
学生だけでなく、その保護者の方々までもが土木に対して悪いイメージを持っていること、そしてそれが世間一般の認識と一致していることに、大きなショックを受けました。
確か、当時のマスコミは「建設業=悪」といった報道が多く、これが悪いイメージを助長していたのは事実です。
しかし、私はそれだけが原因ではないと考えました。
むしろ、土木業界がこれまで広報活動をしてこなかったことこそが、この悪いイメージが定着した大きな原因だと思ったのです。
そして、このままでは土木の未来が危ういと、強く感じました。
エクスマとの出会い、そして「非常識」な挑戦の始まり
「土木に未来があるのか」という学生の言葉は、私に土木の素晴らしさを多くの人に伝えなければならないと決心させました。
それまでは清掃活動のようなボランティア活動をイメージアップ活動をしていました。
ただそれだけでは、大きなイメージアップに繋がりにくいと感じていた時、僕が出会ったのが「エクスペリエンスマーケティング」(エクスマ)でした。
マーケティングコンサルタントの藤村正宏先生の「どんないい仕事、いい商品であっても、知ってもらえなければ存在しないのと一緒だ」という教えは、私にとって大きな転機となりました。
土木は人の役に立つ素晴らしい仕事なのに、悪いイメージが先行し、その必要性や大切さが知られていない現状でした。
公共工事は無駄という風潮や若者の減少といった課題を打開するため、私はSNSと動画を駆使した土木広報に取り組むことを決意したのです。
江口組のSNS発信は、Facebook、Twitter、Instagram、そしてブログから始まりました。
発信したのは、私たちが手掛ける工事の目的や地域への貢献、そして現場で働く社員たちの輝く笑顔です。
3K(きつい、汚い、危険)のイメージを払拭し、「真剣な表情」そして「楽しい雰囲気」を伝えることを何よりも心がけました。
しかし、このSNSの試みは、そう簡単に受け入れられたわけではありませんでした。
SNSを始めたばかりの頃は、工事現場のことを発信すると、同業の方からお叱りのコメントをいただくこともありました。
そして何よりも辛かったのは、社内からの理解や賛同がほとんど得られなかったことです。
当時、僕はまだ専務でしたが、社員のみんなから「専務がしていることは全く分からない」と言われ、「このまま続けていて本当に正しいのか」と悩み、広報活動を止めてしまおうかと考えた時期もありました。
そんな時、再び僕に勇気をくれ、奮い立たせてくれたのは、藤村先生の言葉でした。
「とにかくやってみよう!ダメなら変えればいい」「迷ったときは、どちらが楽しいかで選ぶ」
これまでの業界の「常識」である「広報活動をしないこと」が、土木の悪いイメージを定着させてしまったのだとしたら、これからは「非常識」な考え方で変えていくしかない。
これからはこれが常識なんだ!
そう決意し、SNS発信を続けました!
社員を巻き込み、未来へ羽ばたく土木広報
コツコツと発信を続ける中で、SNSでの広報活動は段々と楽しくなっていきました。
そして嬉しい変化が訪れたのです。
以前は「現場の音がうるさい」といったクレームが多かった地域の方々から、SNSを通じて「工事現場のことを知ることができました!頑張ってください」「地域のために大切な仕事なのですね。有り難う!」といった激励や感謝の言葉が届き始めました。
それに反比例して、現場へのクレームも減少していったと実感しています。
また、SNSでの発信が社員たちにも良い影響を与え、一人ひとりが「現場をキレイにしよう」「イメージアップを心がけよう」と意識し、情報発信に協力してくれるようになりました。
そして大きな分岐点が訪れました。
2020年3月、新型コロナウイルスの影響で採用活動の会社説明会が中止になったことをきっかけに、江口組ではさらに動画コンテンツの強化に舵を切りました。
学生たちと会えないなら「動画で会社のことを伝えよう!」という発想から生まれたのが、総務部で働く土木経験ゼロの社員、CHIKACO姉さんです。
素人目線で土木を分かりやすく、楽しく発信するCHIKACO姉さんは、予想を超えるファンを獲得しました。
江口組に入社を決める社員の多くが、彼女の動画を見て志望してくれ、中には県外から入社を決めてくれた社員もいるほどです。
CHIKACO姉さんは、今や採用活動だけでなく、土木の魅力を伝える「広報姉さん」として大活躍してくれています。
今では私一人で始めた広報活動でしたが、若手社員や女性社員たちが積極的にSNSや動画での発信に協力してくれています。
特に、女性社員たちは、若い感性で楽しく、面白く土木を発信。
彼女たちが考案した江口組オリジナルキャラクターは、工事現場の看板やグッズ、LINEスタンプにも活用され、多くの方々に喜んでいただいています。
若い力や女性の感性は、土木広報に不可欠だと痛感しています。
私たち江口組は、広報活動を「仕事と思ってやらないこと!遊び感覚で発信すること!」と捉え、難しく考えずに、ゆるく発信することこそが秘訣だと考えています。
これからの時代、土木の広報活動はますます必須です。業界のイメージアップ、若者の育成のために、土木広報は本当に大切です。
しかしまだ道半ばです。
最終的な夢は、多くの人に「土木はカッコいいね!」と言ってもらい、子供たちが憧れる職業となることです。
そして、将来なりたい職業ランキングのトップ10に「土木の仕事」が入る日が来ることを、心から願っています。
これからも僕たち自身が土木を楽しみ、その魅力を発信し続けていきたいと思います。
これからも江口組の発信をお楽しみに!!